「鉄路の闘い」という映画があります。
第二次世界大戦直後の1946年に作られた、フランス製の戦争映画です。
フランス鉄道労働者たちのレジスタンス活動を描いたセミ・ドキュメンタリータッチのもので、監督はルネ・クレマン。
のちに傑作「禁じられた遊び」や「太陽がいっぱい」、戦争映画では「海の牙」や「パリは燃えているか」を撮ることになるクレマンにとって、初の長編監督映画になります。
話の筋としては、ドイツ占領下のフランス、あの手この手でドイツ軍に抵抗する鉄道労働者たちを描いたもの。
はっきりいって、爽快感には乏しいです。
ハリウッド製アクション映画のような---例えば似たコンセプトにある「大列車作戦」のような‟盛り上がるストーリー”などありません。
むしろ淡々と、ドキュメンタリータッチで描くことに専念した作品です。
しかし、だからこそリアル。
戦争終結直後に作られただけあって、破壊工作に依って吹き飛ばされるドイツ軍の兵器なども、おそらく鹵獲のものを使った本物。
おまけに特撮などではなく、本物の貨物輸送列車一編成を実際に爆破して谷底に落とすという豪快極まる撮影です。
ドイツ軍は占領地警備に鹵獲兵器を使っていましたから、そんなところまでリアル。
強そうに見えちゃうR35なんて、なかなか珍しいのでは。
撮影条件もまだまだ大らかだった()時代だけあって、物の資料によると空砲よりも実弾を使ったシーンが多いのだとか。
当然ながら使用されている鉄道車両や器材、工具なども当時の本物です。
起重機車までたっぷり見れちゃうとか、鉄道関係がお好きな方にも貴重な映像資料なのでは。
あまりにもリアルなため、当時の仏領インドシナでの公開は早々に打ち切られたそう。
なぜなら劇中で使われた破壊工作があまりにもガチすぎ、植民地の抵抗運動に利用されかねないからだそうで。
実際、ベトミンは鉄道破壊工作にこの映画を参考にしたらしい、とあちらの資料には記載があったり。
それほどリアルなのです。
私自身も含め、マニアなら垂涎のシーンばかりですが、私にとって印象に残ったのは実は別の部分。
この作品の一番凄まじいところは、出演の一部俳優たちを除いて、画面に出てくる鉄道労働者たちの多くが当事者たちそのものということです。
ドイツ軍に捕まった者たちの顔。
あれは実際の光景を知る者にしか出来ない顔をしているように思えます。
既に著作権も切れており、国内販売のDVDはかなりお安いものもあります。
Amazonプライムにもあり、ご興味のある方はぜひ。